2019-01-01から1年間の記事一覧

ちぎるということ

加害者意識を一生保つのはとても難しく、火花が肌を焼くプラスマイナス10秒を待って尚脳から漏れ出ている。事前動作を見抜くためにいくつも用意された浮き島を全滅させながら帰り道のない会話を今日も。 罪悪感も適切な瞬間に取り出せなければただのゴミくず…

コップ一杯

一杯だけ、と付ければ余裕が生まれ、もう一杯です、と挟めば微塵の隙間も無くなる不思議さがそこにある。一杯、とだけ置かれた言葉がどちらに転がるのか、ひと撫でで分かれば良かったのに。 見たもの全てを救おうとする人が美化されるのはそうあるべき、だか…

雨の弦

雨が弦に見える人や星が降るように見える人、触れられる表現の一つ一つにはその人が見た世界が詰まっている。感性はタイムマシンに乗らなくても自在に過去や未来を行き来する。言葉の選び方は見ている世界との合わせ鏡であり、筆遣いであり、色彩そのものだ…

瞼の檻

涙が一番小さな海だとしたら、瞼は一番小さな扉かもしれない。自分が唯一制御できる実体を伴う境界線。閉じた裏側から、扉の外を想像する。悠々と流れていく光の束を、二番目の瞳で追い続ける。開いた瞬間に目が眩もうと、あてどもなく美しい想像が必要な時…

無音声

文章を書くときに一つだけ気にしていたことがある。あった。即座に意図を伝える分の運び方を避けること。オブラートよりも薄くなってしまった決めごとは、それでも微かに息継ぎをしている。特異な書きぶりで気を引きたかったからなのか、誰にも伝えたくない…

花ゆり落ちる

キャパシティを越えた人間を抱えた船は静かに沈むべきだ。既に冷えた目は言葉を持ちつつある。この場合の接続詞は「だけれど」ではなく「どのみち」だろうか。怯えに似た傲慢さを気取られないように口を潜める。 地面に落ちた花を拾って部屋に飾っていた頃、…

6月215日

何事もなかったかのように夕飯は口に運ばれていき、違和を感じないことに違和を感じる揺り戻しは随分と遅れてやってくる。ヒーローでもないのに。特筆すべきことはない、別に、普通、語彙は違えど司る理由は根で繋がっている。掘り出す前に消える後悔。体を…

冷え性

雪を蒔いている。時折空から落ちてくる雪を。少しでも殖えますように。足元の景色の彩度を少しでも落とせように。鮮やかになりすぎてぐらつく視界を包み隠せますように。芯の底から冷えて冷えてしかたがない人間に向いている仕事だとお告げを受けた。雪を撒…