花ゆり落ちる

キャパシティを越えた人間を抱えた船は静かに沈むべきだ。既に冷えた目は言葉を持ちつつある。この場合の接続詞は「だけれど」ではなく「どのみち」だろうか。怯えに似た傲慢さを気取られないように口を潜める。

地面に落ちた花を拾って部屋に飾っていた頃、どんな顔をしていただろう。綻びかけていたのに、存在を全うできなかった花。道を歩けばいくらでも目に入るそれらを選ってしまえば、その時点で偽善の二文字で手足を縛られる。すべてを拾い集める力がないなら、せめて踏まないように静かに歩くしかないのではないか。

大切にしたいものはいくつもあってはならない。ひとつに向けて研ぎ澄まされた好意にこそ価値が宿る。